生まれ育った実家で独り暮らしをする親のために備えておきたいこと

生まれ育った実家で独り暮らしをする親のために備えておきたいことについて、大切なポイントを解説させていただきます。

核家族が主流の現代、独り暮らしの65歳以上が増加中

総務省発表のデータを見ますと、2015年の時点で65歳以上の単独世帯は全体で562万6,000世帯とされています。65歳以上人口に占める割合は16.8%ですが、年齢が高くなるにしたがって、その割合は大きくなります。

これは6年前のデータで、2020年の国勢調査の詳細の発表がまだされておりませんが、現在はもっと増えていることが予想され、今後、益々増加していくものと思われます。

実家で独り暮らしをする親に心配なこととは

1つ目は事故です。事故といっても交通事故ではなく、住宅内での事故です。65歳以上の事故発生場所の77%が住宅内です。事故の内容は、転落や転倒が最も多く、誤飲・誤嚥や火傷など様々です。

中でも、段差の多い古い一戸建て住宅で起こりやすい階段や玄関での転落、転倒が若い世代に比べると割合が高くなっています。

2つ目は火災です。2019年消防庁のデータによると、住宅内火災死者数における高齢者の割合は7割を超える(73.6%)とのことです。81歳以上の場合、80歳以下の3倍にも急増していることがわかっています。

3つ目は孤独死です。東京都のみのデータとなりますが、65歳以上の孤独死とみられる死亡者数が毎年右肩上がりで増加の一途となっており、そのうち4日以上発見されないケースは全体の60.2%、発見までの平均日数は 17日ということです。

4つ目は認知症問題です。独り暮らしになると、いろいろな意味で意欲が低下しがちです。高齢期の健康な暮らしのためには、食・社会参加・身体活動(運動)、この3つのバランスが大切といわれます。

ところが、独り暮らしになると、食事の準備が疎かになるとか、食が細くなる方が多いものです。それにより体調を崩しがちになり、外出も億劫になるなど、悪循環となることがあります。

そうなると認知症を発症しやすくなるものです。内閣府のデータによると、2025年には65歳以上の認知症患者が高齢者全体の20%まで増加すると推定されています。

そこで問題となるのが、自宅の売却ができなくなるとことです。 成年後見制度を活用しても、本人の生活に不必要な自宅の売却は家庭裁判所が認めてくれない可能性が高くなっております。

(たとえ不動産が売却できなくても、一旦後見人を選任すると、後見人が専門家の場合は、本人が亡くなるまで後見人報酬を払う必要があります。)

これまでご紹介した4つの問題、それらにより結果的に「しまった」と感じるのは、決まって子世代です。

問題が顕在化してからでは選択肢が限られ、多くの方は後悔されます。そうならないようにしておきたいものです。

ほとんどの親は、住み慣れたわが家を離れたくない

人は高齢になればなるほど、住み慣れたわが家を離れたくないと思うもののようです。 厚生労働省の「高齢社会に関する意識調査」で、「年を取って生活したいと思う場所はどこですか?」という質問に対して、65歳以上の方の実に75%以上が『自宅』と回答しています。

子世代が親世代の今後を心配して、例えば長女が母に「この先どうする?」と質問すると「私はこのままがいい」と答えたので、その先何も進まなくなってしまった。このような経験をされた方は少なくないのではないでしょうか。

人は問題が顕在化しないと行動しにくいもの

ほとんどの方は問題が顕在化してから相談に来られます。しかし、手遅れで選択肢が限られる場合、私としても「どうすることもできません」と言わざるを得ない悔しい思いをします。

  • そもそも顕在化するまで家族の誰もが問題に気付いていない。
  • 問題があるなぁ、と気付いていても、今は大丈夫なので、先送りにする。
  • 問題に気付いていても、家族の中で自分が旗振り役となるほどの余裕がない

問題に気付いていても、家族の中で自分が旗振り役となるほどの余裕がない

ぜひとも、気になることがあるのであれば、そのときになって「しまった」とならないよう、問題を先送りしない方がよいのではないでしょうか。

だからこそ、そのときになって「しまった」とならないためにやっておくべきことは!?

生まれ育った実家で独り暮らしをする親のために備えておきたいことは、「ご両親がお元気なうちに対策をする」ということです。

ご両親が心も体もよりお元気なうちに対策を検討するほうがより多くの選択肢を検討できます。「うちはちょっと心配」と思われる方でも、「後で」ではなく「今」から対策の検討に入ることが最も効果的だということです。

また、ご両親が「今のままでいい」とおっしゃった場合でも考えたいことや対策したいことは多くあるかと思います。

問題を解決するためにはプロセスが重要

問題解決の要は「正確な現状把握」です。つまり、対策を検討するためには、正確な現状把握をせずには始まりません。 家族ごとに内容は異なりますが、現状把握をすべき項目は多岐にわたります。

一般的な項目を挙げますと、ご両親のライフプラン、子世代のライフプラン、ご両親のお金のこと、将来の介護のこと、暮らし方(住居環境)のこと、財産の管理保全のこと、将来の相続のこと、次世代への負担のことなどです。

広範囲な観点を踏まえた現状把握が必要で、また同時に総合的な検討がポイントとなってきます。

その際は、今後のライフプランの考え方や法的な対処法、福祉との調整や不動産マーケットのことなど、様々な専門知識が必要となります。

また、ご両親とのお話や、兄弟姉妹の調整など、とてもデリケートなことなので、家族だけでは難しいとお話しされる方もいますし、検討したのはいいが中途半端で話が頓挫する、最悪なのは無理に家族内で進めて揉めるケースも散見されます。

第三者が中に入って進めるだけで、途端に進めやすくなることもありますので、やり方は慎重にご検討ください。

正確に、強い推進力で丁寧・正確に進めるためには、場合によっては無理に家族で進めず、総合検討と家族調整が得意な専門家に相談することも選択肢の 1 つです。

まとめ・補足

2025年に団塊の世代が75歳を迎えます。団塊の世代は最もボリュームの多い階層で、今後より一層、独り暮らしをする親が増えていくことが予想されます。

そんな中、少しでも多くの家族が、そのときになって「しまった」という思いをしないためにも、ご両親がお元気なうちに、そして少しでも早い段階で今後のことについて、ご両親の意向を軸としながら、家族で検討をしていただければと考えています。

わが家は心配と思われる方こそ、「ちょっと話しづらいから今度にしよう」ではなく、まさに今日から動くくらいがちょうどいいかもしれません。

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この記事の制作者

後藤 明

著者:後藤 明(実家相続の生前対策アドバイザー(CFP®))

トヨタ系住宅メーカー在籍時、相続税対策のためのアパート建築事業を担当する中で、「賃貸住宅事業では土地オーナーの真の悩み解決ができない」と痛感し、CFP資格を取得し独立。

相談者からは「心配事以外の課題も発見し同時に解決してくれる」「家族にも言えない本音を引き出し、それぞれの立場を考えながら調整してくれる」等、幅広い専門知識を活かした問題解決力、家族の調整力に定評がある。

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