メインコンテンツにスキップ
LIFULL 人生設計

「子どもの教育費はいくらぐらいかかる?」 「資産運用ってどうやってやるの?」 「老後資金対策は何から始めればいい?」

そんなお金にまつわる様々な疑問に答えてくれるのが、ファイナンシャルプランナー(FP)です。ただ、FPに相談することによって、どのような課題が解決されるのか、わからないという人もいるでしょう。また、無料で相談できるFPも多い中、わざわざ有料で相談する意味はあるのか、と疑問に思う人もいるかもしれません。

今回は、そうした疑問を解決するためのヒントを提供するべく、FPの横田健一さんに、今年(2022年)子どもが産まれたばかりというフリーライターの斎藤充博さんが実際に相談している様子をレポート形式でお伝えします。

横田 健一 よこた けんいち

ファイナンシャルプランナー

詳細を見る

子どもの教育費は早めに準備しておくことが重要

斎藤:本日はよろしくお願いいたします。

僕は、現在 39 歳でフリーランスとしてライターや編集、漫画の執筆などをしています。今年 2 月に娘が産まれたばかりで、「今の収入で娘を大学までやれるのか」という点に不安を感じています。奥さんとも「とにかく頑張るしかないね」という話をしているところです。

横田:教育費が不安ということですので、まず基本的なデータを見てみましょう。私がいつも相談に来た方にお配りしている「資産形成ハンドブック」(※PDF)の 26 ページを見てください。

単位:万円 公⽴ 私⽴ 差額
幼稚園(3 年) 65 158 94
小学校 193 959 767
中学校 146 422 276
高校(全⽇制) 137 290 153
⼤学 243 601 358
合計 784 2,430 1,646

※幼稚園から高校「文部科学省『子供の学習費調査』(平成 30 年度)より」 学校教育費、学校給食費、学校外活動費の合計。⼤学は「文部科学省令による標準額および文部科学省『令和 3 年度私⽴⼤学入学者に係る初年度学⽣納付⾦平均額』。私⽴⼤学は、理系の場合。文系の場合は、441 万円

統計上、3年制の幼稚園から大学まですべて公立に通った場合、784 万程度の教育費がかかります。もちろん、「大学は私立も視野に」といった場合も考えられるので、ケースバイケースですが、およそ 1000 万というのが一つの目安となるでしょう。

大学の学費は、私立であれば 4 年間で約 600 万なので、年間で考えると 150 万程度です。そうなると、普段の収入から捻出するのは難しいので、可能であれば事前に準備しておいた方が良いということになります。だから、一般的にも「大学入学に向けて、教育資金を積み立てておきましょう」という話がされることが多いのです。

斎藤:なるほど。よく学資保険で「18 歳の時に一時金 200 万」といった話がされるのは、大学入学のタイミングを意識しているんですね。あと、僕の周囲で「奨学金を借りて大学に行った」という人から「大学卒業と同時に 400 万〜600 万の借金だ」という話を聞くことがありますが、それも統計の数字を見ると納得できます。

横田:奨学金については、現在は貸与型ではない給付型という制度も始まっています。また、高校の授業料の実質無償化という制度が利用できる場合もあります。どちらも条件があるので、利用できるかは確認する必要はありますが、そうした制度の利用を検討しても良いでしょう。ただ、大学の学費については可能であれば、お子様が産まれた 0 歳から 18 歳までの間に計画的に準備していくことが大切です。

斎藤:約 1,000 万と聞くと、「思っていたよりも費用がかからないな」というのが正直なところです。ただ、全て公立の場合なので、現実にはもう少し余裕があった方がいいなと思います。

横田:例えば、小学校から高校までの費用は日々の収入の中から捻出するとして、それとは別に大学の費用として 300 万円を 18 年間で貯めるとしましょう。現在、預金金利は、ほぼゼロなので預金の場合、月々 14,000 円程度が必要になります。

これを仮に 3%で資産運用できたとすると、毎月の金額は 10,500 円程度となり、月々の負担が 3,000 円以上軽くなります。利回り 3%は少し保守的で、投資信託であれば 4〜5%の利回りも決して非現実というわけではありません。そうなると月々の積立額は 8,600 円程度まで抑えることができます。もちろん、資産運用なのでリスクはゼロではありませんが、18 年間であれば長期積立投資でリスクを抑えることができるので、検討する余地は十分にあると思います。

斎藤:漠然と「大学までの教育費はどうしよう?」と思っていましたが、入学までに 300 万と考えると、上手くいけば月々 8,600 円の積み立てで何とかなるのですね。

横田:あくまで一つのケースではありますが、そういうことですね。この金額を子どもが中学に入ってから用意しようとすると、期間が短くなるため当然月々の負担も重くなります。なので、教育費についてはできる限り早く準備を始めておくことが大切ですね。

斎藤:正直、なんか恐ろしくてその辺の計算をしてなかったんですよね。子どもの教育費のために、「もっとたくさん仕事受けないと!」と考えていたのですが、目安がわかったので少し心が軽くなりました。

保険は公的保障を確認した上で想定リスクをカバーできる形に

横田:事前にご記入いただいたヒアリングシートを見ると、月々の支出のところに「保険料1万円」とありますね。これはどのような保険ですか?

斎藤:これは僕の医療保険と生命保険です。

横田:医療保険というと、「入院したら、いくら支払われる」というものですね。ちなみに高額療養費制度はご存知ですか?

斎藤:名前は聞いたことはありますが、具体的にどの程度支払われるかは把握していないですね。

横田:日本は国民皆保険なので、日本人は基本的に公的医療保険に全員入っており、その中で高額療養費制度が用意されています。例えば、何か大きな病気や怪我で 1 ヶ月当たりの医療費が 100 万円かかったとします。その際、一般的には自己負担 3 割で 30 万になるわけですが、それでも負担が大きいので一定額を超えた部分をカバーしてくれるのが高額療養費制度です。

自己負担分の限度額は所得水準に応じて決まっているのですが、例えば年収約 370〜770 万円の場合、100 万円医療費がかかったとしても自己負担分は、約 9 万円という計算になります。もちろん、そもそもの医療費が 200 万、300 万となれば自己負担額も増えますが、それでも、おおよそ 10 万円程度に収まる可能性が高いのです。こうした大きな病気や怪我をする可能性もそれほど高くはないと思いますので、手元に一定額の貯金があるなら、医療保険に毎月数千円払う必要性は、それほどないという考え方もできると思います。また、高額療養費制度については、数ヶ月にわたって高額な医療費がかかった場合、4 ヶ月目以降は「多数該当」ということで、さらに自己負担額が下がるということも知っておいた方が良いと思いますね。

ただ一方で、フリーランスのような個人事業主の方の場合、交通事故などにあって働けなくなってしまった場合の保障が会社員の方と比較して、手薄になっていることに注意が必要です。なので、医療保険ではなくて所得補償保険を検討するという選択肢もあると思います。同様に個人事業主の場合、遺族厚生年金がないため、生命保険の死亡保障を手厚くすることを検討しても良いのではないでしょうか。

斎藤: 確かに自分の場合は、医療保険よりも所得保障保険などの方が必要性が高そうですね。タイミングをみて見直しを検討したいと思います。

個人の資産形成なら投資信託で全世界の株式に分散投資を

横田:資産運用についても事前にお伺いしていますが、つみたて NISA 以外に個別株も持ってらっしゃるんですね。これは、株主優待など何らかの目的を持って運用しているのでしょうか?

斎藤:株のことはほとんどわからないので、「長期で保有しよう!」と思ってチャートを見ながら 10 年間上がり続けている銘柄を買ったのですが、最近下がって慌てているところです。また、以前に勉強しようと思って買った株の雑誌で「テンバガー(株価が 10 倍になること。バガーは野球の塁打を意味する)」という言葉を覚えて、そこで紹介されていた銘柄を 3 万円分ぐらい購入しました。でも、それも今ではメチャクチャ価格が下がっています。

横田:それでも 3 万円で済んだのであれば、「いい勉強」と言えるかもしれませんね。もし 30 万円分投資をしていたら、損失も 10 倍ですから。いわゆる「テンバガー」は、個別株の中でも成長力の高い中型もしくは小型株の中に、そうした可能性を秘めた銘柄があると言われています。もちろん余裕資金で、そういう銘柄を狙うのも良いのですが、リターンが大きい分、リスクも高いことを知っておくべきでしょう。

なので、基本的に個人の方が資産形成をしていくのであれば、投資信託で世界中の株式に分散投資をしていくという方法が良いと思います。具体的には、つみたて NISA の対象になっているような商品から選んでいくのが良いでしょう。そのほかに小規模企業共済にも一定額があるようですね。こうした資産をどのように整理するか考える際に、私はいつも以下のように分類すべきだという話をしています。

「普段使うお金」は、家賃などを含めた日常生活費です。1.5 ヶ月分程度のお金を生活費用の口座に置いておくと良いでしょう。それに対して「とっておくお金」は 1 年分程度の家族の生活費です。これはあくまで目安なので、例えば、会社員の共働き夫婦などであれば、ご夫婦ともに同じタイミングで収入がなくなる可能性はそれほど高くないので半年分など少なめでも良いかもしれません。一方、個人事業主や専業主婦・主夫で、1 年だと心細いという場合には 2 年分にしても良いでしょう。

3 番の「もうすぐ使うお金」は、何らかのライフイベントに備えて用意しておくお金です。例えば、マイホームの購入などのために準備しておきます。現在持っている資産から、これらを除いた残りが「老後に使うお金」として、これから準備していくためのお金になります。これは全額とはいかなくても一定の期間があるので、リスクを抑えて一部を運用に回した方が効率的に資産形成できるでしょう。

「老後のことなんて考えたくもなかったけれど…」

斎藤:老後資金というと、フリーランスなので年金はすごく心配ですね。とても少ないんじゃないかと。それこそ年間十数万ぐらいじゃないかって思いますね。

横田:ちなみに現在、国民年金保険料は普通に払っていますか?

斎藤:払っていますね。

横田:細かいですが、支払いは毎月でしょうか?であれば前納という制度を使って、1 年もしくは 2 年分まとめて支払うことで、保険料の割引を受けることができます。その上で年金の支給額については、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できるのですが、概算を知りたい場合には以下の式で求めることができます。

※老齢基礎年金は、令和 4 年 4 月分からの年金額

​​ 老齢基礎年金は「国民年金の 1 階部分」などと呼ばれるものです。20〜60 歳まで最大で 480 ヶ月の間、年金保険料を払い続けた場合、65 歳から年間 78 万円ぐらい受け取れるという制度です。斎藤様の場合、会社員の時代もあったので、その下の老齢厚生年金も多少受け取ることができるでしょう。ただ、基本的に個人事業主として今後も働くのであれば、過去に未納などがない限り、大体年間 78 万ぐらいの年金を受け取れるということになります。

奥様は会社員ということですので、これらにプラスして厚生年金を受け取ることができます。仮に奥様の年収が 300 万だった場合、老齢厚生年金部分だけで約 60 万、これにプラスして老齢基礎年金の 78 万円も受け取れるので、合計で約 140 万、夫婦で考えると年間約 200 万の年金を受け取れるということになります。ただ、夫婦で年齢差があると年金を受け取るタイミングが異なるので、その辺りは考慮する必要がありますね。ちなみに繰り上げ、繰り下げについてはご存知ですか?

斎藤:まったく知らないです。年金のことは恐ろしくて、なるべく遠ざけるようにしてきたので…。

横田:年金は原則 65 歳から受け取ることができるのですが、これを 1 ヶ月単位で「60 歳からに繰り上げる」もしくは「75 歳まで繰り下げる」ことができるのです。受取額は繰り上げると減額され、繰り下げると増額するのですが、75 歳まで繰り下げれば、受取額は 1.84 倍になります。(※詳細はこちら

なので、75 歳は難しくても 70 歳ぐらいまで今のライターの仕事を継続されるのであれば、65 歳から受け取らずに年金を繰り下げるという選択肢も出てきます。70 歳だと受取額は 1.42 倍になるので、単純計算ですと 78 万円の 1.42 倍で 110 万円ぐらいですね。ただ、増額といっても税金や社会保険料もあるため、増えた分がまるまる手元に入るわけじゃないということには注意が必要です。

よく「年金なんてあてにならない」といった声を報道などで見かけますが、公的年金は生きている間は一生受け取ることができます。そういう意味では想定以上に長生きしてしまった場合の保険として、非常に有益だと思います。

斎藤:自営業者には、国民年金以外に国民年金基金もありますよね?あれも加入した方が良いのでしょうか?

横田:ケースバイケースなのですが、最初にお勧めしたい制度として国民年金の付加年金があります。

これは毎月の保険料を 400 円増やすだけで、加入月数納付月数 ×200 円を 65 歳から上乗せして受け取ることができるという制度です。この制度のお得な点は、払った保険料分を 2 年間で回収できるため、あとはずっと「もらい得」になるのです。例えば、斎藤様は今 39 歳ですので 60 歳までの 21 年間、付加年金保険料を支払ったとすると、10 万 800 円(400 円 ×21 年 ×12 ヶ月)です。これにより、年間 5 万 400 円(200 円 ×21 年 ×12 ヶ月)受け取る年金額が増えるのです。仮に 65 歳から年金を受け取り始めたとすると、65 歳以降は亡くなるまでずっと 5 万 400 円が上乗せで受け取れるというわけです。

斎藤:そんなお得な制度があるなんて知らなかったです。

横田:これは個人事業主の方のための制度で市区町村の年金課で手続きすることができます。先程おっしゃった国民年金基金に加入されるのであれば、この付加年金は使えなくなってしまうので、メリット・デメリットはよく考える必要があると思います。斎藤様の場合は、現在すでに小規模企業共済に加入しているので、これに iDeCo と付加年金を組み合わせるというのが、一つの選択肢になるのではないでしょうか。

「よくわからないから不安」を解消して対策を明確に

斎藤:フリーランスって冗談じゃなくて、来年のことを考えるだけでも怖いですから。ましてや老後のことなんて、あんまり考えたくないですよね。

横田:お気持ちはわかります。ただ、「人生 100 年時代」と言われるようになり、「自分が何歳まで生きるか」がわからない中で、老後に向けて何の準備もしないというのは現実的ではありません。

「出来るだけ元気で長く働きたい」と考えていたとしても、何らかの事情で働けなくなったり、生活水準を下げなければいけなくなる可能性もあります。そういう時に備えて、公的年金のような制度を理解した上で、計画的に準備していくことが大切だと思いますね。

斎藤:相談する前はもっと恐ろしいことを言われると思っていました。でも、これまで「よくわからないから不安」だったものが、ざっくりとでも「どういうものか」を理解できたことは良かったと思いますね。これまで、老後資金のことを考えると、「だんだん夏休みの終わりが近づいているのに、宿題を何もやっていなかった時の気持ち」になっていたんですよね。それが今は、「とりあえず宿題の量を把握して、終わらせるための道筋も見えた」という状態になったと思います。

横田:数年前に「老後資金 2000 万」と言った報道が話題になりましたが、こうした数字はあくまで統計上のものでしかありません。ライフプランや経済状況は、家庭によって千差万別なので、実際に自分の家庭の数値に落とし込んで、早い段階から準備することが重要なんです。

斎藤:今日、「宿題」を終わらせるための道筋を教えてもらったので、「もう少し頑張って収入を増やす」「生活費を節約する」といった次の打手を考えられるようになったと思います。

もし、相談しないで不安を放置したままだったら、「子どもの大学入学費を稼ぐために頑張らないと!」と思って、怪しい仕事を受けたりしたかもしれません。でも、月々 1 万円程度の積立でもカバーできる部分が大きいと思うと、心に余裕が出てきました。また、自分は指圧師の資格も持っているので、なんだかんだで一生働かざるを得ないなとも思っていたのですが、さっきの年金の話なども聞いて選択肢が広がりましたね。

フリーランスの多くは、こういう話題を考えたくないんじゃないか、と思います。そして、考えたくないという人ほど知識がない。なので、「自分はこのままじゃダメかも…」と思っている人ほど相談してみると良いと思います。今日は本当にありがとうございました。

横田 健一 よこた けんいち
詳細を見る

ファイナンシャルプランナー

収入を2倍、3倍にするのは容易なことではありませんが、目の前にある自分のお金や時間を、より有意義に、より有益に使っていくことはそれほど難しいことではありません。 より多くの方に、貴重なお金や時間をウェルスペント(well spent)して頂き、より幸せな人生を送って頂きたい、という思いから、社名をウェルスペントと致しました。 一人でも多くの方に、人生の最期で「有意義な人生だったなぁ」と感じて頂けるよう、お金・資産形成の面から、皆様のお役に立てればと考えております。

大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。YouTube「資産形成ハンドブック」配信中