リースバックとは?メリットやトラブル事例・注意点を徹底解説

老後資金を調達する方法の1つとして、自宅資産を活用したリースバックという手法があります。このリースバックは、住み慣れた自宅に住み続けながら、まとまった資金を得られる手法として注目を集めています。

一方で、業者とのトラブルなど、リースバックを選択したことを後悔するというケースもあるようです。そのため、リースバックは、その活用の仕方が重要になります。

この記事では、リースバックの仕組みやメリット、トラブル事例などについて解説していきます。

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リースバックとは何か?

まず、リースバックの仕組みやリースバック利用者が増加している背景について紹介します。

リースバックの仕組み

出典:THE FP コンサルティング

リースバックとは、自宅不動産を売却し、まとまった資金を得た上で、家賃を支払いながら自宅に住み続けられるサービスのことです。不動産を買い取った業者が貸主、不動産を売却した側が借主となり、賃貸借契約を結ぶことで、売却後も住み慣れた自宅で生活することができます。

リースバックを利用し、まとまった資金を得て住宅ローンを完済できれば、精神的なストレスが大きく軽減されるでしょう。また、住宅ローンの返済額より家賃を低く設定できる場合もあり、家計の負担が減少することも期待できます。そして、将来的にお金が貯まれば、自宅を買い戻せるケースもあります。

ちなみに、リースバックで不動産の所有者が変わっても、外から見れば何の変化もないため、自宅を売却したことをご近所に知られる心配もありません。

なお、リースバックは自宅以外の不動産でも利用可能な場合があります(取扱業者により異なる)。たとえば、資金繰りに困った会社が、事務所を業者に売却し、まとまった資金を得た上で、賃料を支払って継続的に事務所として利用するといったケースが考えられます。

リースバック利用者の増加と背景

株式会社セイビーが実施したインターネット調査によると、リースバックの利用者は2019年から2020年の1年間で約1.5倍に増加しています。

2019年

2.0%(203名)

2020年

3.0%(299名)

全国・全年齢を対象とした調査のため、割合で見ると少ないですが、人数で見ると増加しています。リースバックは比較的新しいサービスであるため、今後ますます増加していくと見込まれます。

リースバックの物件種別では、戸建てが46.5%と最も多く、次いでマンション(区分マンション、分譲マンション)が26.6%という結果となっています。

リースバックで得た資金使途(一部抜粋)のうち、割合が高いのは次の項目でした。

資金用途

割合

住宅ローンの早期返済

43.6%

生活費

27.4%

相続対策

27.0%

老後資金の確保・老後生活の充実

26.6%

医療費・入院費

19.5%

終活・資産整理

17.4%

投資資金

15.8%

借り換え

13.7%

事業性資金

13.3%

旅行費用/車関連費

10.4%

最も多いのは住宅ローンの早期返済です。また、生活費や相続対策にあてるという回答もありました。健康状態の悪化により、医療費や入院費がかさむケースでも、リースバックは現状を打開する有効な選択肢となりそうです。

その他、投資や事業に使うという回答もありました。通常のローンでは、資金使途が定められており、それ以外の目的で資金を使うことができません。住宅ローンなら住宅の購入、事業用ローンなら事業用として使う必要があります。

しかしリースバックで得られる資金は、基本的に資金使途の定めがなく、自由に使うことができます。そのため、新しく始める投資や事業の元手にすることも可能です。また、旅行費用や車関連費など、趣味を楽しむために使うという回答もありました。

リースバックの利用者が増加している背景として、住宅ローン利用者の平均年齢の上昇などがあると考えられます。

住宅金融支援機構の「フラット 35 利用者調査(2020 年度)」によると、2020年度の利用者の平均年齢は 40.3 歳です。繰り上げ返済等をしなければ、完済時の年齢は75.3歳ということになります。2010年度の利用者の平均年齢は 37.9 歳であるため、年々上昇傾向にあることがわかります。

こうした状況を背景に、退職後の住宅ローンの返済が負担となり、リースバックという選択肢を選ぶ人が増えていると考えられます。

リースバックがおすすめなのはこんな人

リースバックをうまく活用すれば、「所有」のわずらわしさから解放されて身軽になり、生活にもゆとりが生まれる可能性があります。続いては、リースバックを活用することでメリットを享受できる人の特徴をご紹介します。次のケースに当てはまるなら、リースバックの活用を検討してみると良いでしょう。

老後資金に不安がある人

退職時期が迫るにつれ、老後の生活費に不安を抱く方は多いでしょう。また、最近では、60歳以降に継続雇用で勤務する方も増えてきました。しかし、給与等の条件面は、現役時代より引き下げられることが一般的です。収入が減少し、生活にゆとりがなくなると、年金生活への不安も大きくなります。

さらに、実際に年金生活に入り、想定していたより年金が少ないというケースもあります。貯蓄を取り崩して生活していると、精神的にも大きなストレスが溜まり安くなるでしょう。

そのため、老後資金にまつわる不安を解消する手段として、リースバックを検討しましょう。

相続対策を考えている人

自宅不動産を所有していれば、いずれは配偶者や子どもたちに自宅不動産を相続しなければなりません。この時、自宅不動産をめぐって、兄弟姉妹間で相続トラブルが発生することがあります。

「うちは家族仲がいいから大丈夫」と考える方がいますが、実際に両親が亡くなると、兄弟間のトラブルが発生するケースも少なくありません。年収や家族構成の違い、生前に両親から受けた援助の違い、介護に携わったか否かなど、あらゆることが争いの種になります。

また、子どもたちの配偶者が意見した結果、トラブルが激化することもあります。遺産をめぐって争い、結果として家族仲が悪くなってしまうのは、もったいないことです。

しかし、リースバックなら、自宅不動産を売却することになるため、現預金等のその他の遺産を兄弟姉妹間で平等に分割することも可能になります。相続対策として、不動産を生前に整理しておきたいと考えているなら、リースバックを検討しましょう。

ローン返済に困っている人

住宅ローンを借りた当初は繰り上げ返済を計画していたとしても、子どもの教育費等がかかる中、思うように繰上げ返済が進まないということもあるでしょう。

現役時代はまだしも、年金生活が始まると、想像以上にローンの負担は重くのしかかるものです。住宅ローンの返済額が生活費を圧迫し、貯蓄を切り崩さなければならないケースも考えられます。

こうした場合でもリースバックを利用することで、まとまった資金を得て、住宅ローンを一括返済できる可能性があります。住宅ローンを完済できれば、支払利息の削減効果が期待できるだけでなく、精神的なストレスも少なくなり、身軽に老後生活を満喫できるでしょう。

自宅の売却を検討している人(売却を周囲に知られたくない人)

自宅を所有することにこだわりがなく、売却してまとまった資金を得たいと考える人もいるでしょう。一定額の資金が手元に入れば、旅行を楽しんだり、新しい趣味を始めたり、老後生活を満喫できます。

リースバックなら、自宅不動産を売却したあとも、そのまま自宅に住み続けることが可能です。外から見て何も生活は変化しないため、ご近所から「自宅を売るなんて、よっぽど生活が苦しいの?」などと、勘繰られる心配もありません。

自宅に住み続けたいけれど、お金がすぐに必要な人

人生は予測不能な部分も大きいため、急に「すぐにでもお金が必要」という事態に陥る可能性もあります。がんなどの病気が発覚し、高額な治療費が必要になるということもあるでしょう。

そのような場合に、資金を得る手段として「自宅を売却する」という選択肢がありますが、愛着のある自宅を手放すのは辛いという方もいるかもしれません。

リースバックなら、住み慣れた自宅で生活を続けながら、まとまった資金を得ることができます。また、状況が改善し、資金が手元にある状態となれば、自宅を買い戻せる場合もあります。

将来的な自然災害が不安になってきた人

最近は、地震や津波など、自然災害のニュースも増えて、不動産などの現物資産につきもののリスクである災害リスクが気になるという人もいるかもしれません。

病気や事故で万一のことがあった時は、団信(団体信用生命保険)によってローンが完済されます。しかし自然災害の場合、建物が全壊したとしても、火災保険や地震保険で住宅ローン残高をすべてまかなえるとは限りません。

賃貸物件に引っ越さざるを得なくなり、住宅ローンと家賃支払いの二重苦に陥る可能性もあります。

不動産という現物資産を所有する限り、こうした災害リスクはつきまといます。しかし、リースバックで自宅不動産を売却し、家賃を支払って住み続けるなら、災害リスクを気にする必要はありません。通常の賃貸物件と同様、契約を解除して引っ越しさえすれば、生活を立て直すことができるでしょう。

遺族に不動産としての資産を遺す必要のない人

かつては「親の自宅不動産を引き継ぎ、子どもが住み続ける」といったスタイルも一般的でした。しかし最近では、大学進学や就職、結婚を機に子どもが遠方で暮らし始め、自宅不動産の引き継ぎを希望しないケースも増えてきています。

子どもが遠方ですでにマイホームを購入していたり、転勤族であるなどの理由でマイホームを所有する予定がなかったりというパターンもあります。また、そもそも単身者であれば、子どもに不動産を遺す必要はありません。親族に手間をかけないように、自分の代で処理しておきたいと考える人もいるでしょう。

遺族に自宅不動産を遺す必要がないなら、リースバックで住宅ローンを完済し、家賃を支払いながら生活したほうが、金銭的にも精神的にも身軽と言えるでしょう。

リースバックのメリット

続いて、リースバックを選択するメリットを紹介します。

売却後も今の住居に住み続けることができる

リースバックを活用すれば、売却後も引き続き愛着のある自宅で生活できます。住み慣れた自宅を手放すのは、精神的につらいものです。また、転居し新たな環境に慣れ親しむのに苦労するというケースも考えられます。住み慣れた自宅で暮らしたいなら、リースバックは効果的な方法と言えるでしょう。

現金化が早く、資金調達の手段として優秀

すぐにまとまった資金が手に入るのもリースバックのメリットです。資金調達の代表的な手法といえば、ローンですが、審査等の手続きがあり実際に手元に資金が入金されるまでに時間がかかります。リースバックなら、業者と話がまとまれば、比較的早くまとまった資金を調達することができます。

将来的に買い戻せる可能性がある

自宅を売却する際に、「あとから後悔しないだろうか」と不安になる方も多いでしょう。リースバックなら、将来的に資金が貯まったら、自宅不動産を買い戻せる場合があります。業者により異なりますが、買い戻すという選択肢があれば、安心して売却に踏み切れるでしょう。

売却を周囲に知られずに済む

自宅不動産の売却では、「家族に何かあったのでは」「お金に困っているのでは」など、あらぬ憶測を呼んでしまう可能性もあります。リースバックなら、引き続き自宅で暮らせるため、売却を周囲に知られる心配がありません。

固定資産税など所有のコストが不要になる

自宅不動産を所有していると、住宅ローンの返済の他、毎年のように固定資産税がかかります。リースバックを利用すれば、所有者が購入者(業者)に変わるため、固定資産税を負担する必要がなくなります。

引っ越しの費用もかからない

売却後も自宅に住み続けられるのがリースバックのメリットです。引っ越すとなると、物件探しをしたり、荷物を整理したり、大きな労力がかかります。また、新天地になじむまで、なかなか生活も落ち着かないでしょう。リースバックでは、このような労力が一切かかりません。

リースバックのデメリット

メリットの多いリースバックですが、注意すべきデメリットもあります。続いては、リースバックを選択するデメリットを紹介します。

売却金額が相場以下になることがある

リースバックでは、「引き続き自宅に住める」「資金が貯まれば買い戻せる場合がある」など、通常の不動産売却とは異なる条件が設定されているケースが多く、また、業者が物件を直接買い取ることから、その分、通常の不動産売却と比べて、売却金額が低くなる傾向(一般的に市場価格の7割~8割程度)があります。

自宅に住み続けることにこだわらないなら、通常の不動産売却を検討したほうが、売却価格が高くなるかもしれません。

リース料(家賃)が相場より高くなることがある

リースバックの家賃の決め方は業者によって異なり、「市場家賃を基準に設定をする」ほか、「物件の買取価格を基準に家賃設定する」など様々な方法があります。(一例として、市場価格とは関係なく、買取価格の10%前後で家賃を設定するケースもあります)。

そのため、周辺の家賃相場と比べて、高くなってしまうことがあります。リースバックを利用したあとの生活設計についてきちんとシミュレーションし、納得できない時は業者と交渉を重ねる必要があるでしょう。

買い戻し時に売却時より高くなることが多い

リースバックでは、お金が貯まったら、自宅を買い戻せる場合があります。しかし業者としては、購入時より高く売らなければ、当然ですが利益は出ません。そのため、購入時の価格は、売却時より高くなることが一般的です。その点も踏まえて、リースバックを利用するかどうかを検討する必要があるでしょう。

ずっと住み続けられるとは限らない

リースバックでは、「普通借家契約」ではなく「定期借家契約」となっているケースがあります。

普通借家契約の場合、契約期間が終了しても更新が可能で、貸主が更新を拒絶する場合は正当な理由が必要になります。一方、定期借家契約では、更新は認められていません。お互いの合意があれば再契約を結ぶことはできますが、基本的に、契約期間が終了すれば退居を求められることもありますので注意しましょう。

自宅にずっと住み続けたいと考えているなら、契約内容を確認するとともに、事前に業者とも相談し、定期借家契約になっていないかをよく確認しましょう。

商品によって、建て替えなどができる場合とできない場合がある

リースバックの契約内容は、業者や商品ごとに異なります。そのため、建て替えが可能なケースもあれば、建て替えが認められていないケースもあります。もし建物の老朽化や耐震問題などで建て替えを検討しているなら、業者に事前に確認しておきましょう。

遺族に不動産としての資産は遺せない

リースバックでは、自宅不動産の所有者は購入者(業者)に移ります。そのため、死後に自宅不動産を持ち家として相続人に引き継ぐことはできません。配偶者や子どもが自宅不動産を持ち家として引き継げると考えていた場合、リースバックの事実が発覚すると、トラブルなる可能性があります。

リースバックを実行する前に、家族でよく話し合い、お互いの意思確認をしておきましょう。

リースバック利用時に注意すべき点は

ここまで、リースバックのデメリットを紹介しました。デメリットの中には、事前に注意点を押さえておくことで、業者と交渉できるものもあります。対策方法を知り、有利に交渉を進めましょう。続いては、リースバックのデメリットを解消するために事前に注意しておくべき点を紹介します。

契約期間と契約書をよく確認する

リースバックの契約を結ぶ時は、契約書をよく確認しましょう。特に、普通借家契約か定期借家契約かは要確認です。自宅にずっと住み続けたいと考えているなら、普通借家契約になっているか必ず確認してください。

自宅の適正価格を知る

リースバックでは、通常の不動産売却と比べて、売却価格が低くなる傾向があります。とはいえ、交渉次第では、業者から提示された売却価格より高値で売却することも可能です。根拠がない状態で交渉するのは難しいので、まずは自宅の適正価格を調べてみましょう。

適正価格を知る方法は、複数の不動産会社から通常売却時の不動産価格を査定してもらったり、ネットなどの一括査定などを利用し参考にするなどがあります。また、土地情報であれば、国土交通省が公表している「土地総合情報システム」なども参考になるでしょう。

信頼できる買主・相談先を見つける

リースバックを利用する際は、信頼できる業者、自分たちに合った業者を探すことも大切です。1 社だけで話を進めてしまうと、見極めができません。複数の業者を比較する中で、信頼できる業者かどうかを見極める目が養われます。

また、業者の意見だけでなく、第三者の意見に耳を傾けることも大切です。身内や友人に、不動産や法律に精通した人物がいるなら、相談してみると良いかもしれません。

アドバイスを受けることで、客観的に善し悪しを判断できるようになる可能性があります。また、不動産に強いFPなどの活用も有効と言えるでしょう。

リースバック後の家賃が負担にならないか確認する

既存の住宅ローンの返済額の負担から解放されるなどの理由で業者が提示する家賃でそのまま契約したものの、結局は家賃の支払いが負担になってしまうケースがあります。年金収入や貯蓄残高等を考慮し、無理なく支払っていける家賃設定かどうかをよく確認してください。

家賃が負担になりそうな場合、家賃を引き下げられないか交渉したり、他の業者を検討したりすると良いでしょう。

買戻しの条件も検討材料に入れる

将来的に自宅を買い戻せるかどうかは、業者や商品によって異なります。また、買い戻しができるケースでも、買い戻し価格の基準が違うこともあります。将来的に買い戻しも検討しているなら、買い戻しの条件もぬかりなくチェックした上で、契約する業者を決めましょう。

商品によって、建て替えなどができる場合とできない場合がある

建て替えの予定があるなら、リースバックの契約前に、建て替えが可能かどうかを確認しておきましょう。リースバックでは所有権が購入者(業者)に移るため、契約後の建物にまつわることは、基本的に業者が決めることになります。

建て替えを必ずしたいと考えているなら、最初から建て替え可能をうたっているリースバック業者を探すのも 1 つです。

リースバックとリバースモーゲージの違い

リースバックと似た選択肢に、リバースモーゲージがあります。リースバックとリバースモーゲージには、どのような違いがあるのでしょうか。

リバースモーゲージとは、自宅を担保にしてお金を借りる仕組みです。一般的に生前は利息のみ返済し、死後に不動産の売却によって一括返済します。相続人が自己資金から一括返済することも可能です。

まとまった資金が手に入る点や、自宅に住み続けられる点は同じですが、リバースモーゲージの場合、あくまで自宅不動産の所有者は自分自身です。リースバックとリバースモーゲージの主な違いを下記の表にまとめました。

リースパック リバースモーゲージ
仕組み 自宅不動産を売却し、売却代金を受け取る。
売却側が借主、購入側が貸主となり、賃貸借契約を結び、家賃を支払って自宅不動産に住み続ける。
自宅不動産を担保に、融資を受ける。
一般的に借入人の死後、不動産を売却し一括返済。
(基本的に相続人よる一括返済も可能)
自宅不動産の所有者 購入者(業者)に変わる そのまま(自分)
担保設定 必要 不要
返済 不要 必要
(死後に売却による返済、もしくは相続人による一括返済)
固定資産税(都市計画税) かからない かかる
居住中のコスト 家賃(リース料)・一般的に利息の返済(利払いなしの場合もある)
利用者の年齢・収入等の制限 なし あり
資金使途 自由 商品により生活資金適用可のケースと不可型(リ・バース 60 など)がある。
いずれも事業用や投資用資金には利用できない
その他のポイント ・ケースによっては資金が貯まれば買い戻せる場合がある
  • 一般的な市場価格より売却価格は低い
  • 一般的に残債が売却査定額より大きい場合は利用できない
  • 商品によりリフォームや建て替えの可否が異なる
  • リバースモーゲージ利用中に、土地・建物の価値が下落した場合には、融資限度額の見直しが行われる可能性がある
  • 現状の商品は変動金利のみのため、金利変動リスクがある

任意売却とリースバックの違い

任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった際に、専門家に間に入って利害調整してもらい、売却を成立させることです。

競売とは、住宅ローンの返済が滞った場合などに債権者(お金を貸した側)が裁判所に申し立て、担保として提供された不動産を売却して、貸したお金を回収する手続きのことを言います。

競売にかけられると、債務者(お金を借りた側)にとっては、売却価格が下がるなどのデメリットがあります。競売になる前に、専門家に依頼し、任意売却が成立すれば、競売より売却価格が高くなる可能性があります。

こうした任意売却とリースバックは、資金調達時の方法の選択肢として比較検討するものではありません。あくまでも任意売却の際の一つの手段としてリースバックが利用される場合があるのです。

しかしながら、実務上は、任意売却になると、転居となる場合が多いため、現住居に住み続けたい場合は、任意売却になる前にリースバックを検討することがよいと言えるでしょう。

リースバックの代表的なトラブル事例

リースバックは、うまく活用すれば、住み慣れた自宅で暮らしながらまとまった資金を調達できる優れた方法です。しかし残念ながら、リースバックを実行してから後悔してしまう方もいます。後悔を防ぐため、トラブル事例を事前に知っておきましょう。

契約内容が想定外で「こんなはずじゃなかった」という事態に

リースバックの仕組みや契約内容をよく理解せず、耳障りのいい言葉を並べる業者と契約してしまうと、「こんなはずじゃなかった」という状況に陥る可能性があります。

たとえば、「ずっと自宅に住み続けられます」と言われてリースバックを実行したのに、定期借家契約になっており、契約期間終了後に退去を求められた、といったトラブルが発生しています。ずっと住み続けることを希望するなら、普通借家契約になっているかを必ず確認してください。

また、今後の支払家賃の総額が売却価格以上になることもあります。リースバックを活用する際は今後のライフプランについて十分検討しましょう。

家賃が払えない

リースバックの契約時には、住宅ローンの返済額と比較し、相場より高めの家賃でも納得してしまいがちです。しかし実際に生活してみると、家賃の支払いがきつく、貯蓄残高がどんどん減っていくというケースがあります。

貯蓄が底を尽き、家賃を払えなくなれば、結局は退居せざるを得なくなります。自宅に住み続けることを希望するなら、問題なく家賃を支払えるかどうか、十分にシミュレーションしてからリースバックを実行しましょう。

運営会社が倒産した

リースバック業者も民間企業である以上、倒産するリスクがあります。倒産した場合、自宅不動産も売却され、所有者が変わる恐れがあります。そうなると、新たな所有者の意向によっては、住み続けられなくなるリスクがあります。

買い戻しができなくなった

「数年後に買い戻せばいい」と考えてリースバックしたものの、想定通りに買い戻しができず、後悔につながるケースもあります。

家賃の負担が思った以上に重く、買い戻すための資金が貯まらないこともあり得ます。また、健康状態が悪化し、医療費等の出費が増え、貯蓄できないこともあります。買い戻しを希望するなら、収入と支出を書き出し、年単位の貯蓄計画を立てておきましょう。

貯蓄計画では、病気やケガなどの臨時費用も一定の範囲で設定しておくことが大切です。

リースバックに関するよくある質問 Q&A

続いては、リースバックでよくある疑問に対して、Q&A 形式で回答していきます。リースバックを検討中の方は、疑問点を解消した上で、具体的な業者選びに進んでください。

リースバックに活用できる物件は自宅だけ?

自宅に限らず利用でる場合があります。業者によっても異なりますが事務所や店舗、工場等の事業用の不動産をリースバックすることも可能な場合があります。

リースバックは、どんな人に向いてるの?

リースバックがおすすめなのは次のような人です。

  • 住宅ローンの返済を負担に感じている人
  • 老後資金に不安がある人
  • ゆとりのある老後生活を送りたい人
  • まとまった資金が必要な人
  • 自宅を売却したことを周囲に知られたくない人
  • 自宅を売却したあとも住み慣れた自宅で暮らしたい人
  • 相続トラブルを防ぐため不動産を手放したい人
  • 子どもたちに自宅不動産を遺す必要がない人
  • 子どもが自宅不動産の相続を希望していない人
  • 災害リスクを考えると不動産を所有することにメリットを感じない人

リースバックは、資金使途の制限はあるの?

資金使途に制限はありません。生活費や旅行費用などはもちろん、投資や事業の元手にすることもできます。

リースバックは、共有名義の場合でも使えるの?

共有名義の不動産全体を処分するためには、共有者全員の同意が必要になりますが、共有持ち分については各自で処分できます。仮に自身の共有持ち分が 1/2であれば、1/2の共有持ち分に関しては処分することができます。

よって、リースバックに関しても、自身の共有持ち分に関してのみであれば、利用可能な場合もあります。ただし、業者により適用の可否が異なりますので注意しましょう。

家賃を安く抑えることはできる?

業者と個別に交渉することになります。また、複数の業者を比較検討し、条件のいい業者と手続きを進めることも大切です。

住宅ローンが残っていても利用できる?(適用の可否の一般なポイントは?)

リースバックは住宅ローンが残っていても利用できます。

ただし、不動産の売却価格が住宅ローンの残債を下回る場合、原則として利用できません。住宅ローンを完済できないということは、金融機関に抵当権があるからです。

抵当権とは、不動産を担保にする権利のことです。返済が滞った時、金融機関は担保不動産を競売により売却し、強制的に売却代金を回収することが認められています。なお、不動産の売却価格が住宅ローンの残債を下回っていても、手元資金で住宅ローンを完済できれば、リースバックを利用できます。

リースバック以外の資金調達方法は?

自宅不動産を担保に融資を受ける方法として、リバースモーゲージがあります。

一般に生前は利息のみ(利息なしの場合もある)返済し、死後に不動産の売却によって融資額を一括返済します。相続人が自己資金から一括返済することも可能です。リバースモーゲージの場合、自宅不動産の所有者は変わりません。

まとまった資金が手に入ること、自宅に住み続けられることなどは、リースバックと同じです。

老後資金確保のためにも有効に活用を

老後資金をどのように確保するかは、悩ましい問題です。

家族構成や健康状態、住宅ローンの残高によっては、年金収入だけでは、生活費をまかなえないこともあるでしょう。かといって、労働収入を得ようにも、就職先が限られていたり、体力的に厳しかったりするかもしれません。

リースバックは、このような状況を打開するための、有効な選択肢となり得ます。

まとまった資金を得ることができれば、金銭的にはもちろん、精神的にも負担感がなくなり、不安やストレスは大きく軽減されるでしょう。また、住み慣れた自宅に住み続けることができ、身軽な状態で安心して暮らしを営むことができます。

一方で、業者との間でトラブルが発生するケースがあるのも事実です。リースバックの仕組みや注意点を知り、信頼できる業者を選び、契約内容は重々確認した上で契約手続きを進めてください。

峰尾 茂克
峰尾 茂克 ファイナンシャルプランナー(CFP)・1級FP技能士

人生100年時代を見据えて、今後の老後資金の悩みはもちろんのこと、将来の相続や介護の問題、子供の教育資金、住宅ローンの問題等に至るまで様々な悩みを抱え、複雑に絡む諸問題に対しどのように向き合ってよいかわからないというお客様が多いのが現状です。 独立系FP歴25年、個別相談5000件以上の実績から、お客様と一緒に様々な諸問題に対して向き合い、解決法を考えていきたいと思います。是非私にお任せください

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