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LIFULL 人生設計

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和元年度)によれば、生命保険に加入している人の割合は、男性81.1%、女性82.9%となっています。

このように多くの人が加入している生命保険ですが、その保険料は家計の見直しを行う際にスリム化すべき項目として挙げられることも多くなっています。それでは生命保険への加入判断や見直しの際のポイントは、どのように考えれば良いのでしょうか?

この記事では、生命保険に加入する際に考慮しておくべきことや保障額の決め方などについて解説します。

横田 健一 よこた けんいち

ファイナンシャルプランナー

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まずは「公的な保障」と「職場の保障」の範囲の確認を

一般的な生命保険、すなわち民間の保険に加入するか否かを判断するポイントは、「その人が、経済的に支えている人がいるかどうか」です。つまり、その人が亡くなり稼いでいた収入がなくなることで、経済的に困窮する人がいれば加入を検討する必要があるということになります。そして、民間の保険で手当すべき必要保障額を決めるためには「何人を、いつまで、どのくらいの生活水準で支える必要があるのか」を確認する必要があります。

これに加えて、国による公的な保障と、サラリーマンの場合は、お勤め先である職場の保障の確認も行わなければなりません。死亡した場合に遺族が受け取ることができる公的な保障の代表的なものとして、遺族年金があります。また、会社員であれば会社や、従業員が加入している共済会といったところから、死亡退職金、死亡弔慰金、遺児育英年金などが支払われるケースもあります。

こうした公的な保障、職場の保障、そして手元にある金融資産や不動産を確認した上で、「それでも死亡時に備えた保障額が足りない」という場合に、初めて民間の生命保険への加入を検討するべきでしょう。確認せずに、生命保険に加入すると、保険料が必要以上に高額になってしまう可能性があります。

一般的に、人生をめぐる様々なリスクに対する備えとして「何となく保険」というイメージがありますが、一定の金融資産や不動産が手元にあり、それによって対応できるリスクであれば、そもそも生命保険に加入する必要がないケースもあることも知っておくべきでしょう。

参考:人生のリスクへの備えに関する考え方

家族構成別に考える生命保険に加入する必要性

周囲から「社会人になったら加入しておきなさい」「結婚したら加入しておいた方がいい」などと言われて、契約内容をよく確認せずに生命保険に加入しているという人もいるのではないでしょうか。しかし、感情面を別にして、経済的な視点からのみ考えれば前述したように、「その人が経済的に支えている人がいるかどうか」を軸に加入の是非を判断したほうが良いでしょう。

例えば、社会人になったばかりの独身の方が生命保険に加入する必要性はそれほど高くありません。その方の給与から両親へ仕送りしているなどの特別な理由がある場合は別ですが、一般的にその方が亡くなることで経済的に困窮する人がいないと考えられるからです。また、子どもがいない共働き夫婦もそれほど加入の必要性はありません。それぞれが働いており収入があれば、どちらかが亡くなったとしても結婚前のライフスタイルに戻れば大きな問題はないと推測されるからです。

一方で、子どもがいる夫婦の場合は、子どもが独立するまでの生活費や教育費を考慮する必要があります。ただ、仮に夫婦のどちらかが亡くなった場合でも、残された方がしっかりと稼ぐことで生活費を賄うという想定であれば生命保険に加入する必要はないかもしれません。しかし、「1 人だけで今後の生活費や教育費を賄うのは厳しい」という場合も多いと考えられるので、生命保険の加入も選択肢に入れるべきでしょう。

また、専業主婦(夫)世帯の場合は、稼ぎ手が亡くなった場合、子どもと専業主婦(夫)が残されることになるため、生命保険に加入する必要性が高いと考えられます。その際には、公的年金保険の遺族給付などを踏まえて、不足分をカバーできるような契約内容にするべきでしょう。

そして、子どもがいる場合でも、独立してしまえば、子どものための保障は必要なくなります。そのため、残された配偶者の生活費もしくは自分の葬儀代などを賄える程度の保険に加入しておくというのも選択肢となってくるでしょう。

こうした家族構成ごとの加入の必要性をまとめると以下のようなイメージとなります。

保障額は将来発生する収入と支出を踏まえて算定

それでは、生命保険に加入する際に、契約すべき保障額はどのように決めていけば良いのでしょうか。

これまで解説してきたように実際に保障額を計算する際には、公的な保障と職場の保障を確認する必要があります。そして、「将来得ることができる収入」から「将来発生する支出」を引いて、保障額を決めていくことになります。

公的な保障の例

  • 遺族年金
  • 埋葬料・埋葬費

職場の保障の例

  • 死亡退職金
  • 死亡弔慰金
  • 遺児育英年金

一般的に結婚していて会社員として働いていた配偶者が亡くなった場合に、継続的に入ってくる収入としては、遺族基礎年金(子がいる場合のみ)、遺族厚生年金、中高齢寡婦加算(女性の場合のみ)などが挙げられます。また、職場によっては、子どもが高校や大学卒業まで毎月数万円受け取れるといった遺児育英年金制度があることもあります。これらに加えて、配当や不動産所得、住宅ローンの団体信用生命保険に加入することで免除される住宅ローンなども「将来得ることができる収入」として考慮する必要があるでしょう。

一方で、「将来発生する支出」については保険加入者が亡くなることによる生活の変化も踏まえて考える必要があります。例えば、基本生活費は残された家族の分だけになるため、一般的に7割程度まで低下すると仮定して試算することが多くなっています。ただ、これは個々の家庭の生活水準によって異なるため、試算する際には実情に合わせて考えた方がよいでしょう。

また、「住居費」も適切な広さの家に引っ越すことで削減できる可能性は高いと考えられます。こうした継続的な支出に、葬儀費用や引っ越し費用などの一時的な支出を加えたものが、「将来発生する支出」になります。

万が一の時の将来の収⼊ 万が一の時の将来の⽀出
<継続的なもの>
• 公的年⾦ (遺族基礎年⾦、遺族厚⽣年⾦、中高齢寡婦加算)
• 職場から(遺児育英年⾦など)
• 配偶者の収入(給与や年⾦)
• その他収入(配当など)
• 住宅ローンの返済免除

<一時的なもの >
• 職場から(死亡弔慰⾦、死亡退職⾦)
• 現在契約している⽣命保険
<継続的なもの>
• 基本⽣活費 (一般的には、 7 割程度に低下)
• 特別⽣活費 • 住居費(適切な広さの家に引っ越し︖)
• 教育費 • 保険料(今後は必要ないはず)
• 積⽴

<一時的なもの>
• 葬儀費用&お墓 • 引っ越し

こうした計算方法に基づいて、実際の計算例を見てみましょう。以下は、44 歳の同い年の夫婦に大学まで進学する予定の 12 歳の子どもがいるという想定で、それぞれに万が一のことがあった場合の保障額の計算例です。男女の平均寿命の違いを踏まえて、夫は 90 歳、妻は 95 歳まで生きるという前提で計算しています。

※1 今後の月間生活費 ✕12 ヶ月 ✕ 年数(22 歳ー末子の現在の年齢) ※2 末子大学卒業後の配偶者の月間生活費 ✕12 ヶ月 ✕ 年数(末子大学卒業時の配偶者の平均余命) ※3 賃貸:家賃の総額、持ち家:団信未加入の場合のローン返済額、修繕費用等 ※4 葬儀費用・小口ローンの返済など

生活費は、子どもが「大学卒業するまで」と「卒業後」で変化するため、分けて考えます。その上で教育費や結婚援助資金、葬儀費用などについても「将来発生する支出」として想定しておくと良いでしょう。

一方の「将来得ることができる収入」については、遺族基礎年金が、子どもが 18 歳になるまで支給されるため 600 万(年間 100 万円 ×6 年)程度、遺族厚生年金は 65 歳まで年間 40 万円で 21 年間などといったような形で計算していきます。

注意したいのは、共働き家庭で夫が 55 歳よりも若い場合、夫自身に遺族厚生年金の受給権はなく、子が 18 歳に到達する年度末までの間のみ受給できるということです。この場合、夫 ​ が亡くなった場合と比べると受給期間も短くなるため、妻が亡くなった際の経済的リスクが高くなるケースがあります。夫婦間の収入のバランスにもよりますが、妻の方が高年収もしくは夫と同程度稼いでいる場合は、残された夫の経済的リスクが高くなります。現在の年金制度上は、このようになっているため、専業主夫世帯などでは、さらにリスクが高まることにも留意が必要でしょう。

本来、生命保険に加入する際の保障額は、上記のような計算に基づいて算出されるべきです。しかし、実際はそこまで考えて加入してない人の方が多いのではないでしょうか。特に職場の保障の部分については、考慮されていないことが多い印象があります。その結果、必要以上に加入する保険契約の保障額が高くなり、結果として保険料も割高になっているというケースも散見されます。

必要な保障額を踏まえて定期的に保険の見直しを

現在契約している保険が適切かどうか判断するためには、改めて前述したようなシミュレーションを行う必要があります。最初は FP(ファイナンシャルプランナー)と一緒にシミュレーションをした上で、毎年アップデートし、必要な保障額を確認しながら、必要であれば現在加入している保険についても見直していくと良いでしょう。

また、死亡保障額を確保する方法として、保障額が四角型の定期保険ではなく、三角型の収入保障保険を検討するという選択肢があります。定期保険の場合、「10 年間は死亡した場合に 3000 万円受け取ることができます」といった契約内容が一般的ですが、加入当初は 3000 万円必要だったとしても 10 年後の時点では、そうでない可能性が高いと考えられます。そのため、年数が経過するごとに保障額が低下していく収入保障保険を利用することで保険料を抑えることが可能です。

保険料の見直しは家計改善を行う上でも効果が高い手段とされています。しかし、保険料を減らそうとするあまり必要な保障を得られなくなってしまえば本末転倒です。自身が生命保険に加入すべきか適切に判断し、必要な保障額を知るために、まずはシミュレーションから始めてみてはいかがでしょうか?

横田 健一 よこた けんいち
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ファイナンシャルプランナー

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大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。YouTube「資産形成ハンドブック」配信中