理想の老後生活を送るためのひとつの選択肢としての不動産投資

以前話題になった『老後2,000万円問題』ですが、テレビなどの報道を見て、誰もが老後までに2,000万円を貯蓄しなければならないと不安に感じた方も少なくないと思います。 しかしながら、これには報道されなかった真実があることをご存じの方は意外に少ないようです。

実は金融庁のワーキング・グループが発表した報告書には、下記のような記載がありました。 『夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ、20年~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる。

この金額はあくまで平均の不足額から導き出したものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが…』(※1)

つまり、報告書が示したものは、あくまでも一例に基づくシミュレーションであり、誰もが「2,000万円」不足するとは言っていないわけです。 しかしながら、その当時は「2,000万円」という数字だけが報道でクローズアップされ、大きな話題になったということが真相のようです。

金融庁のワーキング・グループが真に伝えたかったこと、それは人の寿命の延伸に伴い『資産寿命を延ばす必要性』が重要であることを伝えたかったのではないでしょうか?

理想の老後生活をおくるために

では、どのように資産寿命を延ばしていけばよいのでしょうか。そのひとつの選択肢が、『不動産投資』です。 厚生労働省が発表した令和2年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.64歳。女性は87.74歳、90歳まで生存する割合は、男性28.4%、女性52.5%となっており、まさに、人生100年時代です。

理想の老後をおくるためには金融資産の長期運用ももちろん選択肢のひとつとして有効ですが、不動産投資もまた選択肢のひとつとして有効な手段といえます。

今回は「理想の老後をおくるためのひとつの選択肢としての不動産投資」について解説していきたいと思います。

経験者から学ぶ不動産投資物件の共通点とは

まずは、私が過去に出会った不動産投資家3人の方についてお話ししたいと思います。 不動産投資といえば、中古ワンルームマンションを購入し、賃貸収入を得るという方法が定番のひとつとなっているようですが、現在は少子高齢化が進み、資産格差も進む中で、個々人のライフスタイルも多様化していることから、それらのライフスタイルに合った不動産投資を行うことが求められています。

では、不動産投資家3人(Aさん・Bさん・Cさん)の投資方法について、ご紹介したいと思います。

Aさんは、2013年に都内渋谷近辺の新築タワーマンションをローンで購入し、賃貸している事例です。広さは約40㎡ 弱のワンルーム、家賃は約18 万円/月です。また、この物件は購入価格から約2倍になっています。

Bさんは、2008年に神奈川県の新横浜駅近くの新築マンションをローンで購入し、賃貸している事例です。広さは約45㎡前後の1LDK、家賃は約13万円/月です。また、この物件は購入価格から約1.1倍になっています。

Cさんは、2014年に築17年の都内JR某駅徒歩10分圏内の中古ワンルームマンションを現金で購入し、賃貸している事例です。広さは約25㎡弱のワンルーム、家賃は約8万円/月です。また、この物件は購入価格から約1.3倍になっています。

3人ともに、購入時の価格と比較すると、現在の価格は約1.1 倍~2倍程度上昇しており、仮に今不動産を売却すれば、売却益(キャピタルゲインと言います)+保有期間中の家賃手取額(インカムゲインと言います)がそれぞれプラスになることが予想されます。

そこで、3人の不動産投資家の共通点を見てみますと、不動産購入時期(タイミング)と将来価格の上昇が見込める地域かどうかを考えて購入していることがわかります。

不動産投資にとって重要なことは、今後不動産価格の上昇が見込める地域かどうかを購入の時期を含めて検討する必要があると言えそうです。 購入時期や地域によっては、不動産投資を成功している事例は多々ありますが、現在は、不動産投資用マンションなどの価格が地域によっては高騰しているため、物件選びは慎重に行うことをおすすめします。

▲【図表1】全国の地価公示データ平均値の推移(単位:円/m2)
出典:THE FPコンサルティング ~国土交通省公示価格のデータに基づき図表化~
▲【図表2】公示価格の対前年平均変動率(変動率:%)
出典:THEFPコンサルティング ~国土交通省公示価格(東京圏の市区の対前年平均変動率)のデータに基づき図表化~

不動産投資家の視点

今回ご紹介した3人の視点はそれぞれ異なります。新築・中古で分類すると、AさんとBさんは新築。Cさんは中古です。ワンルームか否かで分類すると、AさんとCさんはワンルーム。B さんは1LDKです。ローンの有無で分類するとAさんとBさんはローンを利用。Cさんは現金取得です。

実に様々であることがわかります。 ここで補足として、「ローンを借りてまで不動産投資をした方が良いか」という点について少しお話ししたいと思います。この点については、賛否両論ありますが、私は、物件次第ではロ-ンを借りて、不動産投資を行ってもよいと考えております。

なぜなら、不動産投資の実質利回り(運用益と言います)の方が借入れのローン金利(調達コストと言います)よりも大きければ、大きいほど、理論上大きな利益(リターンと言います)を得ることが可能になるからです(これをレバレッジ効果と言います)。

ただし、ロ-ンを借りた際に注意しなければならない点のひとつは「空室リスク」です。空室になると、ローンの支払いは継続して発生しますが家賃収入がありません。この時、家計のお金の流れ(キャッシュフローといいます)が不安定になることがありますので、注意が必要といえます。

さて、本題に戻りますが、3人の視点の共通点を述べると、『顧客ターゲットの明確化』が挙げられます。

Aさんのターゲットは、企業経営者や医師、弁護士などの独身高額所得者層や富裕層です。これらの層は、中途半端な賃貸マンションは好まない傾向にあります。ゲストルームなどの共有施設が充実している高級感あふれるタワーマンションへの投資だからこそ、成功した理由のひとつといえるでしょう。

Bさんのターゲットは、DINKS等をターゲットにした少し広めの1LDK です。【図表3】をご覧いただくとわかる通り、昭和の時代は専業主婦世帯が一般的でしたが、現在は夫婦共働き世帯が専業主婦世帯の2倍の数となっております。時代の変化とともに今後は益々1LDKのニーズは増えるものと予想されます。

地域的にも、新横浜駅周辺は再開発が進み、相鉄・東急直通線において、鉄道網の整備が進んでいることからも、利便性の向上の可能性が成功した理由のひとつと言えるでしょう。

▲【図表3】専業主婦世帯と夫婦共働き世帯
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構

Cさんのターゲットは、学生や社会人などの一般層です。既存定番の中古ワンルームマンション投資といえます。

Cさんの場合は、不動産投資のタイミングが良い時期でしたが、学生や社会人などの一般層をターゲットにした既存定番の中古ワンルームマンション投資については、不動産投資家が現在も常に狙っていることから、これから新たに不動産投資を考える方にとっては、このゾーンの価格が高騰していることからみても、お手頃な良い物件が市場に出回らないのが悩みの種となっているようです。

購入物件を売却する際のポイント

では最後に、築年数が古い物件を購入した場合、例えば築 35 年の物件を購入すれば、10年後は築45年となりますが、果たして10年後に売却できるのでしょうか? 実在の例のひとつとして、ご確認ください。

築35年の投資用中古マンションを現金1,200万円(諸経費込み)で購入し、賃貸中の空室リスクを考慮しながら、10年間平均して、月額7万円で賃貸した場合、年間経費(管理費・修繕積立金・固定資産税・都市計画税など)が仮に24万円だとするとこの投資物件を購入して良かったかを簡単にご説明したいと思います。

【図表4】を見ると、単純利回りは年7%、経費を除いた実質利回りは年5%です。一見魅力的な物件のように見えますが、築35年の物件ですので、将来売却する際の築何年や今後、どの程度価格が下落するかなどを想定しておく必要があります。

▲【図表4】単純利回りと実質利回り
出典:THEFPコンサルティング

次に【図表5】と【図表6】を比較してみましょう。 【図表5】は、将来の予想売却価格が手取額で 600万円、【図表6】は1,000万円とした場合、【図表5】は、10年間の手取り家賃収入が600万円ありますが、売却損が600万円となるため、実質利益は無いことになります。

一方【図表6】は、売却損が200万円のため、10年間で400万円の利益となり、実質的な年利回りは約3.3%となります。金融資産で10年運用した場合と比べても魅力的な運用となることがわかります。

このように、不動産投資は、購入時の価格と比べて将来売却価格が下落したとしても、メリットがある場合もありますので、保有期間中の手取り家賃収入と比較しながら、物件を検討することが大切です。

▲【図表5】不動産投資の注意点(例1)(※節税効果などは考慮外とする)
出典:THEFPコンサルティング
▲【図表6】不動産投資の注意点(例2)(※節税効果などは考慮外とする)
出典:THEFPコンサルティング

エピローグ

資産形成の選択肢のひとつとしての不動産投資について解説してきましたが、不動産投資には不動産価格下落リスク、家賃収入に関しての空室・滞納リスク、また、天災リスクや入居者とのトラブルリスクなど様々なリスクもあります。

不動産投資を成功させるためには、これまで解説してきました通り、物件選びとその投資タイミング、ローンを活用するかどうか、賃貸に出す際の考え方、売却タイミングやその方法など、複数の要素が絡みます。

老後に向けた資産形成の中で、総合的に検討した結果、不動産投資をひとつの選択肢としてご検討される際は、リスクを十分にご理解の上、自己責任においてご判断ください。その際は、今回の内容をぜひ参考にしていただければと思います。

(※1 金融庁 令和元年 6 月 3 日 『金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」)  P21』一部抜粋)

峰尾 茂克
峰尾 茂克 ファイナンシャルプランナー(CFP)・1級FP技能士

人生100年時代を見据えて、今後の老後資金の悩みはもちろんのこと、将来の相続や介護の問題、子供の教育資金、住宅ローンの問題等に至るまで様々な悩みを抱え、複雑に絡む諸問題に対しどのように向き合ってよいかわからないというお客様が多いのが現状です。 独立系FP歴25年、個別相談5000件以上の実績から、お客様と一緒に様々な諸問題に対して向き合い、解決法を考えていきたいと思います。是非私にお任せください

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